- CADオペレーターはこれから先も食べていけるのか?
- CADを学習すると、どんな職に就けるのか?
この記事は実際にCADを生業にしている立場から、現状や今後の可能性について書いています。CADを使う仕事と言ってもいろいろあるので、その立場によって見える景色は違います。
ここでは私の主観が多めに混ざっているのでご了承ください。
簡単に自己紹介。
私は製造業界で転職を4回経験しています。技能工からはじめて現在は技術職をしております。得意分野は板金加工でCADは『SOLIDWORKS』『SheetWorks』を使用しています。
詳しくはプロフィールをご興味があればご覧ください。
CADを学ぶメリット|未来は明るい
近年、CADを使わずに「ものづくり」を行うことはほとんどありません。工業製品、建築、土木、アパレルあらゆる「ものづくり」の業界で使われています。
現状、CADを使えれば活躍の場は多くあります。しかも、CADソフトの進化、3D CADの普及でいろいろな物にCADデータが使用されています。
例えば
- 解析
- 実加工のプログラム
- カタログや説明書の製作 etc…
今後もCADスキルを身につけることで活躍の場は広がっていくでしょう。CADオペレーターとしてだけでなく、上記のようなCAD+αのスキルを身につけることで自身の価値をさらに高めることができます。
私は現場で技能工の経験があります。技能工には、『年齢を重ねる → 体力が落ちる → 生産能力が落ちる』という状態に陥る可能性があります。
技能工でも経験が生きてくるので、年齢を重ねることが必ずマイナスになるわけではありませんが、指導者や管理職にならなければ収入アップは難しい職種でしょう。
CADを使う仕事であれば、まったくではありませんが、さほど体力は必要ありません。経験を積み、学習を続けることで、収入は上がり続ける可能性が高い職種です。
デメリット|ミスが許されない
製造業や建築業などに携わるなら、CADを学習することにデメリットは無いとも言えますが、敢えて挙げてみます。CADを使って毎日仕事をしている私が感じていることです。
プレッシャーが半端ない!
この一言に尽きます。私はメーカーで設計と加工データの作成をしていますが、自分のミスで
- 加工ができない
- 組み立てられない
- 作ってはみたものの、不具合が発生
なんて事が起こり得ます。
いつも自分が担当した製品が『完成 → 納品 → 設置 → クレーム無し』ここまでずっと不安です。しかし、完成した時の達成感は上流工程から関与することで大きくなります。(私は「やってやったぞ感」って呼んでます。)
基本的にはミスが許されない職種ですが、ヒューマンエラーはどうしても起こります。そのため、後工程に影響が出ないようにする仕組みづくりが大切です。ISOを取得しているような企業であれば、ミスを防ぐ仕組みづくりに取り組んでいるので、大事になることはほとんどありません。
ミスを防ぐ仕組みづくり(設計者・CADオペを守るには大切のもの)ができていないのであれば、自分で提案して作ってしまいましょう。その取り組みを経営層や上級職者が邪魔するようであれば、転職も視野に入れておく必要があります。
転職にはリスクがあるので慎重に進める必要があります。求人サイトで情報収集して、転職エージェントに相談しましょう。
CADを使う仕事について
- CADオペレーター
- 設計
- 解析
- 加工
他にもデザイナーなどがありますが、私が馴染みのある職種を大きく分けるとこの辺りになります。
この中でもさらに業種によって、職種が分かれます。
CADオペレーター
CADオペレーター(通称:CADオペ)は技術者や設計者が考えたものをCADを使って、製図・モデリングする仕事です。
「どんな複雑な形状でもモデリングできます」っていう人がそばに居ると心強いです。
CADオペとしてやっていくならそこまで目指したいですね。
しかし、設計者はCADを扱える事がほとんどなので、自分で描くことが多いです(私は簡単な図形だけど描くのに手間が掛かるようなものをお願いすることはあります)。
実務ではCADプラス何かしらのスキルを身に付けないと、収入アップは難しいでしょう。「CAD + CAM」や「CAD + CAE」などCADを使う仕事に就くと自然と身に付くはずです。
CADオペはどこまで行ってもオペレーターなので、作業者としてのポジションしか取れません。
収入を上げるには「CADを扱う能力」はもちろん、「設計や生産に関する技術力」を向上させる必要があります。
設計
設計と言っても業種によって様々な職種があります。
建築だと意匠設計や構造設計、設備設計など、工業製品であれば機械設計や筐体設計、板金設計とそれぞれ違う人が担当することも多いです。
それぞれ専門の技術が必要です。「自分の持っている技術を用いてCADで表現する」そんな職種です。
技術力が勝負になるので、常に学習して最新の技術をインプットする必要があります。
私(某メーカーの板金屋)の例です。
顧客の要求事項や製品のコンセプトを満たすための能力設計、購入品の選定等が終わったところから、私の仕事が始まります。
ここまでは2次元のCADデータと仕様書だけの場合や、工業デザイナーが描いたスケッチや3Dモデルとコンセプトだけなんてこともあります。企業によって違うでしょうが、ここまでが構想設計の段階になります。
まず始めるのは、SOLIDWORKSでのモデリングからです。
製品に対する要求事項を満たしつつ、実際に汎用機で加工(試作)可能な3Dモデルを作成していきます。
3Dモデルができた時点で『レビュー → 修正 → 製図 → NCデータを作成 → 資料作成 → 製産担当・外注先への製作指示』といった流れで仕事をしています。
製図まではSOLIDWORKSのみで進め、NCデータはSOLIDWORKSで描いた3Dモデルを利用して、CAMソフトを使用して作成します。
設計業務のほとんどの時間を、モデリングに費やしています。その後の工程は、3Dモデルを利用して物事が進んでいきます。
解析
CADというよりは「CAE」と呼ばれる分野です。簡単に言うと、『試作を作る前に問題がないか確認するためのシミュレーション』です。CAEも設計の一部として、設計者が行うことがあります。
CAEの作業にはCADデータが必要になるため、CADスキルが必要です。
「CADデータはCADオペレーターが用意して、CAEは専門家が行う」といったこともあります。
加工・その他
加工側でCADの仕事というとCAMです。
「CAM」を簡単に説明すると、『CADデータを利用して、工作機械を動かすためのプログラムを作成するソフトウェア』です。CAD操作の延長で機械を動かすプログラムコードを書くことができます。
工作機械はもちろんの事、加工に関する幅広い知識が必要な分野になります。
加工中においても、CADデータを利用する事は多いです。
紙図面では分かりづらい部分をCADを使用して確認したり、ロボットのティーチングにCADデータを利用したりと、CADデータを元に複雑な形状の加工や短納期での加工が可能になってきています。
加工後も組み立てや検査、説明書など自分が描いたものが活躍しているのを目にすると、なかなか気分が良いものです。
CADを学習する前に目標を決める
CADデータは設計や解析、加工、その他にも多くの場面で利用されています。3D CADが使えればできることは多いですが、2D CADのみでできる事は少ないので、今後、CADを学習するなら3D CADが良いでしょう。
2D CADのみで運用しているメーカー(企業)も多くあります。今後そういう企業も3D CADを導入していくと考えています。
下の表はCADやCAE等の導入率です。従業員数が増えると、3D CADの導入率が高い傾向にあります。全体を見ても、2Dよりも3D CADの導入率が高くなっています。
CADを学習する前に決めること
- どの業界で活躍したいのかを決める
- CADで何をしたいのかを決める
これだけは必ず決めておきましょう。この二つを決めておけば、学ぶべきものがはっきりしてきます。
ネット上には『CADランキング』や『おすすめのCADソフト』等の記事が多くみられますが、「ランキングが高いから」という理由で選ぶのはやめてください。
ご自身の目標に合うCADを選ぶことが大切です。どの山に登るか決めれば、手段が見えてきます。
例えば、私の場合は板金加工の経験を生かしたかったので、SOLIDWORKSの勉強をしました。板金用の3次元CADに『SheetWorks』というものがあります。
SheetWorksのベースCADはSOLIDWORKSなので、SOLIDWORKSを学ぶことでSheetWorksもある程度使えるようになります。
私は独学で勉強してみたら、さっぱり分からなかったのでスクールに通いました(20万円かかりました……)。
SheetWorksを導入している会社に転職して、はじめて業務で使用する際は、「作業が遅い」という問題はありましたが、スクールで学習していたので困ることはありませんでした。
目標が決まっていないなら、高額なものに手を出さない
CADは高額なものが多いので、個人で購入して学習するのはおすすめしません。自分に合わないと感じた時や、挫折した時に出費が無駄になってしまいます。
CADのフリーソフトがあるので、とりあえず動かしてみると楽しいかもしれません。
有名なのは『Jw_cad』『Fusion360個人用(無償版あり)』『Creo Elements/Direct Modeling(無償版)』でしょう。無料だと始めやすいですが、目的を忘れてこれらに時間を使いすぎないように注意してください。
職業訓練校に行ってみるとか、安価なセミナーに参加してみるなど、なるべく少額で始めることをおすすめします。
手軽に始められる通信教育や、本格的な講座でも低価格な『e-Groove(イー・グルーブ)』『諒設計アーキテクトラーニング 』などを利用してみて、「実際にCADに触れる」「試してみる」のもおすすめです。
SOLIDWORKSを低コストで習得するには、『株式会社VOSTのSOLIDWORKSセミナー』がおすすめです。詳しくは【SOLIDWORKSを独学で習得する方法】で解説しています。
焦って大金を使わないように気をつけてください。
目標が決まっているなら行動する
それなりに高額になりますが、やりたいことや就職に向けて目標が決まっているなら、『アビバ』『KENスクール 』『Winスクール』など、就職支援のあるスクールだと遠回りせずに済みます。無料の資料請求から始めましょう。
スキルアップや転職は、大きく収入を上げたいなら必要な行動です。そのための投資なら必要経費。成功すればすぐに元が取れます。特に転職は良い求人から決まっていくので、タイミングが成功と失敗の分かれ道になることがあります。早め早めの行動が大切です。
行動するか否かで未来は確実に変わります。取るべきリスクを取って学習し、行動していきましょう。
資料請求や転職活動は無料です。お金のかからないところから始めて、スキルアップ・収入アップを目指しましょう。