SOLIDWORKSで『ねじ山』のモデリングをするにはどうやるのか、イメージできますか?
テーパーねじは面倒ですが、平行ねじ(ストレート)は、ネジの形状が頭に入っていなくても調べることなく、描くことができるのですごく簡単です。一度経験してしまえば簡単なので、ここで覚えてしまいしょう。
この記事では【テーパーねじ】【平行ねじ】それぞれの『おねじ』と『めねじ』のモデリング方法を解説します。
※この記事はスケッチ編集と押し出しボス/ベースを問題無くできることを前提に記述しています。
管用ねじは、これらのCADデータを編集すると、大概は対応可能です。
ねじ山に関する設定の確認
上の標準ツールバーから歯車アイコンの「オプション」をクリックします。
「ドキュメントプロパティ」タブ → 「詳細設定」 → 「ねじ山」と「シェイディングされたねじ山」にチェックを入れてください。
チェックが入っていれば「OK」ボタンをクリックしてオプションを閉じます。
平行ねじ|おねじ【ねじ山】
M10の全ネジを例に解説します。
「φ10、長さ30mm」の円筒形を描いてください。
例:(正面にφ10の円をスケッチ → 押し出しボス/ベース → ブラインド 30mm)
「穴ウィザード」から「ねじ山」を選択してください(環境によっては「Background」と表示される)。
加工データとしてそのまま使用しないように警告が出る場合はOKをクリックしてください。
- 「ねじ山の位置」にねじ山を開始する部分を選択します。
今回は下の画像の左側(右側面から見て)の「エッジ」をクリックしましょう。 - ネジの一山分オフセットすると、実物に近い形状になるので「1.5mm外へオフセット」します。
- 「押し出し状態」は「次の選択まで」を選択してください。
その下のボックスをクリックしてアクティブにし、ねじ山の位置とは逆の「エッジ」(画像の右側)をクリックします。
*ここでネジを切る量を設定できます(ブラインド:切る深さ、回転:切る回転数)。 - 「仕様」で下記のようにそれぞれ選択しましょう。
- 種類:Metric Die
- サイズ:M10x1.5
- ねじ山の作成方法:ねじ切り
下にスクロールすると「ねじ山オプション」という項目があります。ここで正ネジ、逆ネジを選択可能です。
「OK」ボタンをクリックすればネジが切れたモデルができます。
これに頭を足してあげればボルトにできます。下の画像は六角ボルトの頭を足してみました。
平行ねじ|めねじ 【ねじ穴】【ねじ山】
ここでは2種類のモデリング方法を解説します。それぞれ見た目や使い勝手が違うので、モデルの使い道を考慮して選択してください。
t3.0の鋼板にM4のタップを立てる事を例に解説します。
下の画像のように「t3.0x150x100」の板形状を用意します。
例:(平面に150×100の矩形をスケッチ → 押し出しボス/ベース → ブラインド 3mm)
「穴ウィザード」コマンドを選択してください。
- 穴タイプ:ねじ穴 – ストレート
- 規格:JIS
- 種類:ねじ穴
(管用の平行ねじはここで選択可 ※[G]のみ[Rp]は選べません。[G]と[Rp]は寸法・形状が同じです。) - 穴の仕様:M4x0.7
- 押し出し状態:次サーフェスまで
それぞれ選択しましょう。
下にスクロールすると「オプション」項目があります。その中の『表面の皿穴』『裏面の皿穴』とありますが、要は面取りです。
必要で有ればチェックを入れて、面取り量と角度を入力しましょう。
「位置」タブに切り替えて、グラフィック領域のねじ穴を挿入したい面をクリックします。位置は後で編集できるので面をクリックして必要な数を挿入します。
終わったら「OK」ボタンをクリックしましょう。
ねじ穴の点を「スケッチ編集」することで位置を変更、定義することができます。
ここからはおねじでも使用した「ねじ山」を使用してめねじをモデリングする方法です。
もう一度「穴ウィザード」を選択してください。
- 穴タイプ:穴
- 規格:JIS
- 種類:ねじ下穴ドリル
- サイズ:M4x0.7
- 押し出し状態:次サーフェスまで
それぞれ選択しましょう。
「オプション」の『表面の皿穴』『裏面の皿穴』は下穴の面取り量です。
必要であればチェックを入れて、寸法を入力しましょう(M4の下穴なのでφ4超は必要)。
「位置」タブに切り替えて、グラフィック領域の挿入したい面をクリック → 挿入したい位置をクリックします。
下穴の挿入が終わったら「OK」ボタンをクリックしましょう。
「穴ウィザード」から「ねじ山」を選択してください(環境によっては「Background」と表示される)。
「ねじ山の位置」は下穴の「エッジ」を選択して、ネジの一山分(0.7mm)外側へオフセットします(板からはみ出すようにオフセット)。
- 押し出し状態:次の選択まで(底面を選択)
- サイズ:M4x0.7
- 種類:Metric Tap
- ねじ山の作成方法:ねじ切り
それぞれ選択します。
「OK」ボタンをクリックすれば完了です。
『ねじ穴』と『ねじ山』それぞれ意味は同じですが見た目や手間(工数)が違います。モデルの使い道を考えて選択してください。
テーパーねじ|おねじ【ヘリカルとスパイラル】
テーパーねじは、描くのに時間がかかります。最初から描くのが面倒な方のために、CADデータ[SLDPRT]を記事内に置いているので、ダウンロードして確認しながら読めるようにしてあります。
最後の工程だけ残してあるので「スイープカットだけやってみる」など、実際にSOLIDWORKSで確認するのにご利用ください。
管用のねじ山については日本産業標準調査会のサイトで『JIS B 0203』を参照するか、MISUMIさんの技術情報をご覧ください。
25Aの片ニップルを例に解説します。
※基準径の位置がJIS規格と違うので、25Aの片ニップルとしては使用できません。
「φ34・厚さ3.4・長さ60mmの円筒形」を用意します。
例:(平面にφ34の円をスケッチ → 3.4mm内側にオフセット → 押し出しボス/ベース → ブラインド 60mm)
- 下の画像のように「逆三角形を正面にスケッチ」
- 中心線の長さ(逆三角形の高さ)を「544」に
- 「スケッチ終了」を選択
新しく正面にスケッチをします。
下の画像のように先程の「スケッチとパイプを参照して三角形のスケッチ」をしましょう。
フィーチャータブから「回転カット」を選択してください。
- 回転軸:最初に描いた逆三角形の「中心線」
- 方向1:ブラインド「360deg」
それぞれ入力したら「OK」ボタンをクリックしてください。
テーパーにした側の端面にスケッチします。
「外側のエッジをエンティティ変換」してください。
フィーチャータブのカーブから「ヘリカルとスパイラル」を選択してください。
- 指定定義:高さとピッチ
- パラメータ:可変ピッチ
- パラメータ下部:反対方向・右回り
それぞれ選択します。
領域パラメータ:
- ピッチ → 1行目と2行目を共に『2.3091mm』
- 2行目の高さ → 25(ネジを切る深さ)
- 2行目の直径 → 34(ネジの切り終わりの直径)
それぞれ変更します。
全て変更が終わったらOKボタンをクリックしてください。
ねじ山をスケッチするための平面を追加します。
分かりづらいですが、「ヘリカルカーブの開始位置」を探してクリックしてください。
「参照ジオメトリ」から「平面」を選択します。
第2参照には「エッジ」を選択して「OK」ボタンをクリックしてください。
追加した平面にねじ山の形状をスケッチします。
下の画像のようにスケッチしましょう。(若干違いますが『JIS B 0203』を参考にしました。)
0.1mm外にはみ出ていますがわざとです。
外径に一致させたいところですが、エラーが出るか再構築に時間がかかることが多いので、少し外に出しておくと無駄な時間を省けます。
「スケッチ終了」して「フィーチャー」タブから「スイープカット」を選択してください。
- 「輪郭」に「ねじ山形状のスケッチ」を選択
- 「パス」に「ヘリカルカープ/スパイラルカーブ」を選択
- 問題なくプレビュー表示されれば「OK」ボタンをクリック
- エラーが出る場合はスケッチに問題があることが多いです。スケッチとヘリカルカーブの数値をもう一度確認してください。
- ねじ山がパイプから飛び出てしまう場合はオプションの「端面に整列」にチェックを入れてください。
ネジの切り終わりの形状が微妙ですが、なかなか格好よく描けたんじゃないでしょうか。
テーパーねじ|めねじ【ヘリカルとスパイラル】
おねじ同様、最初から描くのが面倒な方のためにCADデータ[SLDPRT]を記事内に置いているので、ダウンロードして確認しながら読めるようにしてあります。
最後の工程だけ残してあるのでスイープだけでもやってみてください。
後少しです。手短にしますので、お付き合いください。
ここでは当サイトで公開中の『ねじ込み式(TR)管フランジ』を例に進めていきます。
テーパーの穴まで完了しているCADデータを用意しましたので、ダウンロードしてヘリカルとスパイラルから始めましょう。
ダウンロードしたSLDPRTファイルを開いて、「ハブの上面にスケッチ」をします。
中央の穴の「内側のエッジをエンティティ変換」し、フィーチャータブのカーブから「ヘリカルとスパイラル」を選択してください。
- 指定定義:高さとピッチ
- パラメータ:可変ピッチ
- パラメータ下部:反対方向・右回り
それぞれ選択します。
領域パラメータ:
- ピッチ → 1行目と2行目を共に『2.3091mm』
- 2行目の高さ → 20(ネジを切る深さ)
- 2行目の直径 → 31.999(ネジの切り終わりの直径)
それぞれ変更します。
全て変更が終わったら「OK」ボタンをクリックしてください。
ねじ山の形状をスケッチします。
おねじではヘリカルカーブの開始点から参照平面を追加しましたが、正面と開始位置が一致しているため正面にスケッチしましょう。もし違うようなら参照平面を追加してください。
下の画像のようにスケッチしてみてください(若干違いますが『JIS B 0203』を参考にしています)。
テーパー部は『スケッチ3』を参照しています。内径に一致ではなく少し外側にラップさせるとエラー回避になります。
フィチャータブから「スイープ」を選択します。
- 「輪郭」に「ねじ山のスケッチ」を選択
- 「パス」に「ヘリカルカーブ/スパイラルカーブ」を選択
- 「OK」ボタンをクリック
ねじ山が飛び出すようなら、オプションの「端面に整列」にチェックを入れてください。
補足|実物に近い形状にしたいなら【スイープカット】
ここではスイープを使ってめねじにしましたが、実際に製造するのと同じように、
- 下穴
- 面取り
- ねじ切り
の順でモデリングすると、実物と同じ形状を描くことができます。
手順はスイープもスイープカットも同じです。違いは面取りの工程が増えるのと、ねじ山の向きが変わるだけです。
下の画像のように、レンダリングしても違和感がありません。
スイープでも、スイープカットでもねじ山が描けます。状況によって使い分けができるように、両方知っておくと便利です。私の経験では、スイープの方がデータ量が小さい傾向があります。
管用テーパーねじ|ねじ穴
テーパーねじは管用であれば、「穴ウィザード」を使って簡単に描くことができます。簡略的でいい場合は「ヘリカルとスパイラル」を使うより、こちらの方が簡単で早いです。
テーパーソケット(25A)のねじを描いてみましょう。
「φ41.5、長さ46mm」の円筒形を描いてください。
「穴ウィザード」コマンドを選択してください。
- 穴タイプ:ねじ穴 – テーパ
- 規格:JIS
- 種類:管用テーパねじ
- サイズ:1(25A)
- 押し出し状態:次サーフェスまで
- ねじ:19.1mm
- 表面の皿穴:34mm / 90deg
それぞれ選択と入力をしておきます。
「位置」タブに切り替えて「端面」をクリックします。
「円の中心」に合わせて、「一致」アイコンが表示されている状態でクリックしましょう。
これを両面に対して行い、ねじの無い部分を規定の板厚にしてあげればソケットの完成です。
ねじ山のモデリングに関する解説は以上です。
お疲れ様でした。
まとめ|ねじ山のモデリング方法
- 平行(ストレート)ねじは、穴ウィザードから簡単に
- テーパーねじは、ヘリカルとスパイラル → ねじ山の形状をスケッチ → スイープ or スイープカット
(めねじは『穴ウィザード』 → 『ねじ穴 – テーパ』が簡単)
ねじ山のモデリングはストレートは簡単ですが、テーパーそれなりに工数が掛かります。ねじ山を表示させるとデータ量が大きくなり、大規模アセンブリで使用すると動きが遅くなる事があります。
ねじ山は一度描いておけば使い回せることが多いので、余裕のある時に描いておいて「ここぞ」という時に使えるようにしておくと便利ですよ。
スケッチをコピーする方法はこちらの記事後半で解説しています。(ねじ山の使い回しに使えます。)
今回は【ねじ山のモデリング方法】でした。
それでは。