よく使う形状だけど、大きさが変わる部品ってありませんか?
何も考えずに行き当たりばったりで描いてしまって、後で大きさを変えようと思ったら面倒臭いことになってしまったり、一から描き直す羽目になったりしたことはありませんか?
うまくやれば最初に描いた部品を使いまわして工数を削減できます。
この記事では「同形状・大きさ違い」の部品を効率の良くモデリングする方法や考え方を紹介します。主に拘束関係を使ってスケッチする方法の解説です。
拘束関係だけでは無理なモデルは、関係式を使うと便利です。関係式を使って効率化する方法はこちらをご覧ください。
製作物の確認
例として「アイビーム」を使って解説します。
JIS規格の必要な部分だけを描いてみました。今回モデリングする寸法を確認しておいてください。
- H = 100
- B = 75
- t1 = 5
- t2 = 8
- R1 = 7
- R2 = 3.5
これを5ヶ所(H・B・t1・t2・R1・R2)の各数値を変えるだけで大きさが変えられるように描いていきます。
どうやって描くか思いつかない方は一緒に進めていきましょう。思いついた方はこれ以上読み進める意味はありません。
『アイビーム』断面形状のスケッチ
新規作成・スケッチ編集
新規部品を開いてください(新規 → 使用する部品テンプレート → OK)。
「正面」を選択して、「スケッチ」タブの「スケッチ」をクリックしてください。
スケッチ拘束が非表示になっている場合は表示させた方が拘束関係が理解しやすいです。
「メニューバーの表示 → 非表示/表示 → スケッチ拘束」で、表示させましょう。
中心線・ダイナミックエンティティミラー
まずは中心線を2本描きます(直線 → 中心線)。
「スケッチ原点」に「一致」したところをクリックします。
ポインターを「上へ」移動して、距離は適当で良いので「鉛直」アイコンが表示されている状態でクリックしましょう。
ダブルクリックまたは右クリック → チェーン終了で「チェーンを終了」します。
もう一度、「スケッチ原点」に「一致」したところをクリックしてください。
今度はポインターを「右へ」移動して、これも距離は適当で良いので「水平」アイコンが表示されている状態でクリックします。
ダブルクリックで「チェーンを終了」します。
「ダイナミックエンティティミラー」をクリックしてください。
選択した線を中心に、スケッチしたものを自動でミラーコピーするコマンドです。
「鉛直な中心線」をクリックしてください。
断面形状のスケッチ(直線コマンドとエンティティ分割・拘束の使い方)
「直線」コマンドをクリックしてください。
連続(チェーン)でスケッチします。距離は適当で良いですが、描きたいもの(アイビームの断面)と同じ形状になるように描いてください。
なるべく上の方で「鉛直な中心線」に「一致」したところをクリックします。
「右へ」移動して「水平」アイコンが表示されている状態でクリックしてください。
次は「下へ」移動して「鉛直」アイコンが表示されている状態でクリックしましょう。
少しポインターを動かし、先程「クリックした場所へ戻って」(または右クリック → 円弧に切り替え)から「左下」へ移動してクリックしてください。
ここでは拘束関係は気にしなくてOKです。
さらに「左下へ」移動して「拘束アイコンが何も表示されていない」状態でクリックします。
ここでもう一度「円弧に切り替えて左下へ」移動してクリックしましょう。
最後に「下へ」移動して「鉛直」アイコンと水平な中心線に「一致」のアイコンが表示されている状態でクリックしてください。
「右クリック」→「選択」で選択モードにします。
上半分の形は出来ました。足りない拘束関係を追加していきます。
最後に描いた「鉛直な線」と「その上の円弧」をCtrlキーを押しながらそれぞれクリックしてください。
左側のPropertyManagerの拘束関係追加で「正接」を選択して「OK」ボタンをクリックしましょう。
同様に「斜めに描いた線」と「その右の円弧」をCtrlキーを押しながらクリックしてください。
拘束関係追加で「正接」を選択して「OK」ボタンをクリックしましょう。
作図線を追加します。「直線」コマンドをクリックして左側のPropertyManagerの「作図線」にチェックを入れてください。
「最後に描いた鉛直な直線と円弧の接しているところ」から「上の水平な直線」に一致と鉛直拘束を付けて作図線を描いてください(一致アイコンが表示されている状態でクリック → 上へ → 一致と鉛直アイコンが表示されている状態でクリック)。
同様に「上の水平な直線」から「下の斜めの線」に一致と鉛直拘束を付けて作図線を描いてください。
中点に一致しないように注意してください。
「エンティティ分割」コマンドを選択してください。
コマンドバーにコマンドが有ればそこから、無ければ右上のコマンド検索に「エンティティ分割」と入力して選択しましょう。
ツール → スケッチツール → エンティティ分割
「上の水平な直線の右側」に「一致」アイコンが表示されている状態でクリックしてください。
『拘束を削除するよ』と、ダイアログが表示されたら、「はい」をクリックしましょう。
「同じ直線の左側」を同じく「一致」アイコンが表示されている状態でクリックしてください。
エンティティ分割を閉じます。
分割して出来た点をドラッグして、水平な直線と「鉛直な作図線の接点に一致」させます。
同様に分割してできた左側の点も左の水平な直線と「鉛直な作図線の接点に一致」させてください。
分割して出来た「2本の直線」をCtrlキーを押しながらそれぞれクリックします。
左側のPropertyManagerで拘束関係追加から「等しい値」を選択して「OK」ボタンをクリックしましょう。
こうすることで作図線が「(B – t1) / 4」の位置になります(作図線の長さが『t2』)。
「スマート寸法」を選択してください。
【1. 製作物の確認】の「H以外の寸法」と「テーパー部の角度」を追加していきます。
特に順番等はありませんが、形が変わってしまうようなら取り消し[Ctrl + Z]をして形が変わらない所から寸法を追加してください。
「エンティティのミラー」を選択します。
ミラーするエンティティは「全てのエンティティを選択」してください(グラフィック領域内で[Ctrl + A]、またはドラッグしてボックス選択)。
PropertyManagerの「ミラー基準のボックスをクリック」しましょう。ボックスがアクティブ(水色)になるので、グラフィック領域の「水平な中心線」を選択します。
下の画像と同じ状態になっていれば、「OK」ボタンをクリックしてください。
「スマート寸法」でHの寸法(100)を追加します。
断面のスケッチが完成しました。
押し出しボス/ベース
「フィーチャー」タブの「押し出しボス/ベース」をクリックしましょう。
押し出し方向はブラインドでも良いのですが、個人的には「中間平面」がおすすめです。
「長さを入力」して「OK」ボタンをクリックすれば、3Dモデルの完成です。
完成!お疲れ様でした。
寸法の変更
今回描いたアイビームの大きさ違いを描くには、デザインツリーにある「押し出しボス/ベース」をダブルクリックします。
グラフィック領域内に寸法が表示されるので、変更したい寸法をダブルクリックすると、各寸法を変更することができます(寸法をダブルクリック → 寸法を入力 → 再構築 → OK)。
複数要素があるRなども一ヶ所寸法を変更すればすべて変わります。
まとめ・補足|拘束関係を利用する
拘束関係を利用して、寸法の入力を最小限に抑えてモデリングしました。こうすることで、同形状・大きさ違いのものを効率よく描くことができます。
設計中であれば、「形状が変わる可能性はないけど、大きさが変わる可能性がある部品」を描くときに有効です。
モデリングする時は今後どの部分が変わる可能性があるのか理解していると、後工程の人達や将来の自分の為になります。
設計をどう進めていくか考え、部品の特性を考えながらモデリングしていきましょう。
効率の良いモデリング(同形状・大きさ違い)についてでした。
それでは。